お仕事仮面。


フランス語で相手の職業を尋ねるときのフレーズの一つに

Qu'est-ce que vous faites dans la vie?

というのがあって

これをそのまんま、直で英語に置き換えてみると

What do you do in your life?

となる。



わたしがびくっとしたのは

dans la vie

の部分で、

daily lifeという意味もあるけど、
やっぱりla vieは「人生」という意味合いでも捉えてしまうから。

つまり単語をそのまま直訳してしまうと、
仕事とはイコール、
「あなたが人生でしている事」
「あなたが日々している事」
になってしまうのだ。

こう書くと、ごもっとも、ではあるけれど。

どれだけの人が、

自分のしている仕事を

人生を費やしているものとして

澱みなく宣言できるだろう。


パリで感じたことのひとつ。

日本人はいろんな仮面(ペルソナ)をつけている。
社会という、誰が采配を振るう監督かも分からない劇場で
常に役割を演じている。
とても真面目に、ごく自然に。


職場での自分、
友達といるときの自分、
家族や恋人といるときの自分、
どれも少しずつ違うのは、当たり前の事だ。
そしてどれもが、自分の側面だ。
たったひとつの「本当の自分」なんて存在しない。
人は、たくさんの仮面の、側面の集合体だ。
それこそがありのままの自分だ。
真実は現実の中にある。

でも、とりわけ職場での自分を
「これがあなた」と言われる事には、
違和感がある人が多いのではないだろうか。

いわゆる9時〜17時までの仕事だったとしても
労働時間である8時間は
1日24時間のうちの3分の1。
睡眠時間をのぞけば、
その割合はもっと増える。

鏡をみて

自分の仕事を、
仕事をしている自分を、
「これが私」と言えますか。

その仮面、気に入ってますか。




もちろん、現実には、

フランス人は仕事=人生だなんて絶対思ってないだろうし、

このフレーズをつかうシチュエーションでも

「普段何してるの?」
「普通に会社員してるよ〜」

ぐらいのノリのはず。


ただ、仕事について考えるとき、

時間を切り売りするような働き方はしたくないなと思ったときに

できるだけ、自分を好きでいたいと思ったときに

ふと思い出すフレーズなのです。